【Creative Camp】新しい体験の価値提供という視点から見るポップアップ

【Creative Camp】新しい体験の価値提供という視点から見るポップアップ

消費価値観の変化とポップアップの進化

近年、生活者の期待は単なる「商品」から「体験」へと大きくシフトしています。SNSの普及により、消費行動は「所有すること」から「共有すること」へと移行し、従来のモノ消費(商品そのものを 購入)から、コト消費(体験を重視する消費)、さらにはトキ消費(一瞬の特別な体験を求める消費)へと進化しています。この流れの中で、一時的に開催されるポップアップイベントは「ここでしか得られない特別な体験」を提供する場として注目を集めています。

ポップアップは、単に商品を販売するだけでなく、ブランドと生活者が直接コミュニケーションをとる場を創出し、没入感のある体験を提供することで、より深いブランドの価値を伝える手法へと進化しています。

インタラクティブな体験を生むポップアップ

ポップアップの最大の魅力は、生活者が能動的に関わることができる「インタラクティブな体験」にあります。
インタラクティブ性を重視したポップアップでは、来場者がただ商品を購入するのではなく、双方向の参加を楽しめる仕組みが取り入れられています。例えば、自分好みにカスタマイズできる体験や、実際に手を動かして学べるワークショップが挙げられます。また、その場でのリアルタイムなフィードバックを通じて、ブランドと来場者が直接コミュニケーションをとることで、より魅力的な体験が生まれます。

今回ご紹介するワークショップの例は、横浜ベイクォーターで定期開催されている「まちの学校」 です。

【横浜ベイクォーターまちの学校|第12弾】お正月に飾りたい!ねじねじ毛糸でカンタン”しめ縄づくり”12月7日 (土)開催!

「まちの学校」は、横浜にゆかりのある講師を招き、親子で学び、体験することを目的としたイベントです。例えば、12月に開催されたワークショップでは、好きな色の毛糸を選んで「ねじねじ毛糸のしめ縄」を作る体験が提供されました。このような体験型のポップアップは、生活者の創造性を刺激し、単なる消費活動を超えた充実感をもたらします。

没入型体験がもたらす感情的なつながり

ポップアップのもう一つの大きな魅力は、生活者が物語の一部となる「イマーシブ(没入型)体験」を提供できる点です。没入型体験を重視したイベントでは、五感を刺激する空間設計とストーリーテリングが鍵となります。たとえば、特定のテーマや物語に沿ってデザインされた空間は、訪れた人を非日常の世界へと引き込み、より深い体験を提供します。

たとえば、イマーシブシアターのように、来場者自身が物語の一部となる仕掛けが施されることで、より記憶に残る特別な体験が生まれます。

ここでは、株式会社水星が運営する「泊まれる演劇」というイマーシブシアターの例をご紹介します。「泊まれる演劇」とは、実際のホテルを舞台に、観客が登場人物と関わりながら物語に没入できる新感覚のナイトエンターテイメントです。ホテルのロビーや客室、廊下など、建物全体が舞台となり、参加者は自由に歩き回りながらストーリーの一員として体験を積み重ねます。

役者陣の演技を目の前で体感できることはもちろん、音響や照明、香りといった五感で体感できる空間演出によって物語の世界へと没入していきます。

(2023年度京都公演「雨と花束」劇中写真より引用)

このような体験型イベントは、単なる観劇では得られない「特別な時間=トキ消費」を創出し、生活者に強い記憶を残します。また、参加者同士の交流やSNSでのシェアを促すことで、イベントの価値がさらに広がっていきます。

没入感を伴うイベント体験の人気は高まり、近年数多く開催されるようになりましたが、宿泊を伴う観劇はホテルを舞台にしているからこそできる体験だと言えますね。

今年はさらにパワーアップして、2023年に上演された「雨と花束」が再演されるようです。ぜひ今 後のイベント情報にも注目してみてくださいね。

●泊まれる演劇 公式サイト
●「雨と花束」ティザーサイト
●「雨と花束」公式サイト
●「泊まれる演劇 MIDNIGHT MOTEL '22」POPAP編集部のレポート

空間デザインがもたらす体験価値

こうしたポップアップにおいては、空間デザインも重要な要素となります。単なる物販スペースではなく、世界観を体感できる場として設計することで、生活者に強い印象を与えることができます。

最後にご紹介する、POPAPが主催した現代アートイベント「Respiration」では、映像・写真・立体 など、多様な作品が混在する実験的な空間を創出しました。都市の中心で「生のアート鑑賞体験」を提供することで、訪れる人々に新たな視点を与え、アートに対する敷居を低くする取り組みがなされました。

実験と共創により生まれるアートイベント『ЯeSpiration』が12月16・17日に表参道AQ spaceにて開催

このように、ポップアップの空間デザインには、単に商品を展示するだけではなく、「体験そのものをデザインする」という視点が求められています。

ポップアップの未来と可能性

ここまでお伝えしてきた例からも想像できるように、体験型ポップアップの未来はテクノロジーの進化とともにさらに多様化し、より没入感のある体験を提供する可能性を秘めています。デジタル技術を活用することで、リアルとバーチャルを融合させた新たな体験の形が生まれ、ブランドと生活者の関係性もより深いものへと変化していくでしょう。

また、ポップアップが一時的なイベントとして終わるのではなく、ブランドの長期的な価値向上につながる仕組み作りも重要です。単なる販売促進ではなく、ブランドの理念やストーリーを伝え、ファンとの継続的な関係を築くための体験設計が求められます。たとえば、ポップアップで得られたデータやフィードバックをもとに、今後のサービス開発やコミュニティ形成へとつなげることで、 一過性のイベントではなく、ブランドの価値を持続的に高めることにつながります。

このような変化の中で、ポップアップは「商品を売る場」から「体験を共有する場」へと進化し続けています。今後のさらなる展開にも注目したいですね!

POPAPでは、ポップアップに関するご相談を承っています。
お問い合わせはこちらから

■編集部おすすめのMAGAZINE■