【CREATIVE CAMP】地域密着の視点から見るポップアップ

【CREATIVE CAMP】地域密着の視点から見るポップアップ

近年、ポップアップイベントがさまざまな場所で開催され、話題を集めています。その中でも、地域の特性や魅力を最大限に活用し、地元の活性化につながるポップアップイベントが注目されています。ポップアップは、都市部だけでなく地方の活性化にも寄与し、地元の文化や特色を発信する重要な手段となりつつあります。

本記事では、地域密着型のポップアップイベントがどのように地域活性化に寄与しているのかを考察していきます。

地域密着型ポップアップの可能性

ポップアップイベントは、短期間限定で地域の魅力を外部に発信するユニークな機会を提供します。例えば、地元の特産品や文化、アートをテーマにしたポップアップは、訪問者にとって新鮮で興味を引く存在となります。これにより、地域内外から人々を呼び込み、観光客の増加や地元経済の活性化に寄与します。

さらに、ポップアップは地域のストーリーを伝える役割も果たします。地域の歴史や伝統に根ざしたテーマのイベントを展開することで、単なる物品の販売を超えた深い体験を提供し、訪問者に「その地域ならではの価値」を感じさせることができます。

以下に、地域で行われたポップアップの例をご紹介します。
日本文化の発信地として革新を続けてきた京都を舞台としたアートマーケット artKYOTO 2022。歴史的建造物である⼆条城を舞台に、通常⾮公開である重要⽂化財の天井の梁、漆喰の壁などをいかしたアートフェアはこの一例と言えるでしょう。各ブースで楽しむことが出来る作品の鑑賞や購⼊はもちろんのこと、建築空間としても価値の⾼い世界遺産・⼆条城の⾮⽇常の空間だからこそ⽣み出されるギャラリスト・美術商との出会いや新たなコミュニケーションの場を体感することができます。
期間中は、⼟間と板間が⼀体となった広⼤な空間に 14 ブースのギャラリー・アーティストが出展されました。

【フォトレポート】世界遺産・二条城を舞台にした国際的なアートフェア2022年10月14日(金)~16日(日)in 京都・二条城 


地元の経済活性化への効果

ポップアップイベントは、地元経済の活性化に直接的な影響を与えます。まず第一に、地元産の素材や製品を扱うイベントでは、地域の生産者や職人が新しい顧客と接点を持つ機会が生まれます。そして、イベントに合わせて訪れた観光客が飲食店や宿泊施設を利用することで、地域全体の経済に波及効果も期待できます。

例えば、地元の農産物を使った料理を提供するポップアップや、地域の伝統工芸を紹介するワークショップなどは、地元の産業を支えるだけでなく、訪問者にその魅力を伝えることにもつながります。これにより、地元の生産者や職人の知名度向上や販路拡大が実現します。

ここでは、福井県で行われている工房見学・マーケットイベントの例をご紹介します。

“見て・知って・体験する” 作り手たちとつながる体感型マーケット


「RENEW(リニュー)」は、福井県鯖江市・越前市・越前町で開催される、持続可能な地域づくりを目指した工房見学イベント。会期中は、越前漆器・越前和紙・越前打刃物・越前箪笥・越前焼・眼鏡・繊維の7産地の工房・企業を一斉開放し、見学やワークショップを通じて、一般の人々が作り手の想いや背景を知り、技術を体験しながら商品の購入を楽しめます。また、RENEWでは狭義の産業観光だけにとどまらず、社会的意義の高い活動を行う全国各地のローカルプレーヤーが産地に集うマーケット「まち/ひと/しごと -Localism Expo Fukui-」も開催予定。国内最大規模となる一大イベント。

地域のアイデンティティ発信とブランド化

ポップアップは、地域のアイデンティティを発信する場としても機能します。地域の独自性を強調したイベントを開催することで、その地域の「ブランド化」が進みます。たとえば、特定の食文化や工芸品に特化したポップアップは、その地域ならではの特色を強調し、訪問者に鮮烈な印象を与えることができます。

また、地域ブランドの強化は、単なる観光地としての魅力を超え、地元に住む人々の誇りや愛着心を高める効果も期待できます。地域のアイデンティティが確立されることで、地元の人々も自分たちの文化や産業を再認識し、それを未来に継承していく意識が生まれるでしょう。

都内で開催されている、地域の独自性を強調したイベントを一部ご紹介します。

株式会社八芳園が運営するポップアップ型ショールーム「MuSuBu」
八芳園が港区白金台プラチナ通りに開業したポップアップ型ショールーム。
地域へ人とモノを動かす、ユニークなコンテンツ開発と可変性あるポップアップ型のイベントプロデュースをはじめ、「人」と「食」を中心としたコミュニティコンテンツ、オンラインとリアルの融合によるコミュニティの創造、プラチナ通りの新しい賑わいと交流拠点の創出を目指しています。

過去に開催されたポップアップ:
【持続可能な農業へ】福島県の魅力を体感できる「ふくしま。GAPフェア~第一弾『桃』・第二弾『梨』~」を白金台「MuSuBu」で開催

一般的に、常設型で一部地域に特化した形で特産品を扱うアンテナショップなどもありますが、ポップアップ型での開催の場合、テーマやイベントごとに様々な地域にフォーカスを当てることができます。また、飲食物のみでなく、交流や体験を目的としたポップアップは、コミュニケーションをする中で愛着が深まる時間となるでしょう。

地域住民と訪問者をつなぐ交流の場

ポップアップは、地域住民と訪問者をつなぐ交流の場としても重要です。例えば、地元の職人や農家が直接訪問者と対話できる場を提供することで、訪問者はその土地の人々や文化に触れることができます。このような交流は、訪問者にとって単なる観光以上の価値をもたらし、その土地のファンを生み出すきっかけになります。

また、住民同士がポップアップを通じて新たなつながりを築くこともあります。イベントの準備や運営を通じて地域全体が一体感を持つことは、地元コミュニティの活性化にも寄与します。このような場が生まれることで、地域全体が一つのプロジェクトに向かって団結する機会が増え、より魅力的な地域づくりへとつながります。

持続可能な地域活性化の実現へ

ポップアップは短期間のイベントですが、中長期的に地域活性化の効果をもたらすきっかけになり得ます。中長期の施策に繋げていくためには、一時的な集客や売り上げだけでなく、その地域の魅力を外部に伝え続けるためのプランニングが重要です。

たとえば、ポップアップイベントで得られた知見やフィードバックを活用して、継続的なプロジェクトや新しい事業を展開することが考えられます。また、ポップアップを通じて生まれたネットワークを活用し、地域外の人々とのコラボレーションを促進することも考えられるでしょう。

持続可能な地域活性化を実現するためには、ポップアップイベントが単発のイベントで終わるのではなく、地域の発展に向けた第一歩として機能することが求められます。

最後に、これまでPOPAPが主催した地域と連携したポップアップイベントもご紹介します。
浦和PARCOにクリエイターが行き交う街道が出現! KAIDOU MARKET vol.1

POPAPは2022年に開業15周年を迎えリニューアルを行う浦和パルコのプロモーション活動と合わせて、さまざまなクリエイターを巻き込んだPOPUPイベント『KAIDOU MARKET』をプロデュースを行いました。

「クリエイションの交差点をつくり 浦和の全ての人々へ 新しい場としてのPARCOを印象付ける」をコンセプトとし、中山道六十九次のうち江戸・日本橋から数えて3番目の宿場である浦和という街道の歴史の上に、縦長のスペースを街道と掛け合わせ『KAIDOU MARKET』としています。次世代のクリエーターたちによるポップアップイベントを行うことで、地域のコミュニティとの繋がりが生まれました。街道には多くの人が行き交い、リニューアルオープンする周りの店舗に花を添える形で盛り上がりのあるイベントとなりました。

浦和パルコ2021年改装プロモーション プロジェクトレポート
クリエイティブ制作編
ポップアップイベント編

12年ぶりにリニューアルした墨田区 新・「すみだモダン」地域産業が持続する”最先端の下町”拠点としてポップアップストアを錦糸町PARCOにオープン

ものづくりのまち、すみだ区の魅力を発信する【すみだモダン】プロジェクトレポート

2021年9月14日(火)から9月26日(日)の間、錦糸町PARCOで行われた展示会。墨田区にお住いの皆様の暮らしに根付く錦糸町PARCOに新・「すみだモダン」としての拠点を設けることで、企業に限らないブランドづくりを推進する試み。ポップアップストアではこれまでのすみだモダンを象徴する『モノ(「すみだモダン ブランド認証商品」)』に加え、*新・「すみだモダン」の考え方の基本にある『コト(事業を創出する事業者の方々)』に対する理解を深められる展示も行いました。さらに、参加型のインスタレーションも設置。「共に創る」ことをコンセプトに、コミュニケーションの拠点として運営されました。

*“ものづくりのまち”としての産業ブランド力を国内外にPRする目的で2009年からスタートした「すみだ地域ブランド戦略」。継続的な活動によってイメージアップ・認知度向上に一定の成果を上げた。
しかし、近年の消費者の購買活動は、商品の機能やデザイン、価格等の「見た目の重視」から、事業者の理念や職人の想い、バックグラウンド等、「ストーリー性」を重視する価値基準へと変化したことなどから、2019年より「すみだ地域ブランド戦略」リニューアル構想を推進。
新・「すみだモダン」では従来の「商品そのもの」だけではなく、そのバックグラウンドにある事業者の「活動」に光を当て、事業者とのパートナーシップによる墨田区ならではの産業ブランド力の向上、ひいては「事業を新たに起こす・継続する」事業者を増やしていくといった活動を行っている。

まとめ

ここまでの事例でお伝えしたように、地域密着型のポップアップイベントは地域の魅力を発信し、経済や文化の活性化に貢献する可能性を秘めた重要なツールです。地域密着型のイベントを通じて、地元住民と訪問者のつながりを深めることで、地域のアイデンティティを強化するだけでなく、持続可能な発展のための基盤を築くことができます。

これからの地域活性化には、ポップアップのような短期的かつ効果的な手法を活用しながら、地域全体の魅力を引き出すことが求められています。地域の未来を描くためのポップアップの可能性は、ますます広がりを見せていくでしょう。
地域の魅力を発信するポップアップ、ぜひ注目してみてください!

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