水戸市民会館が2023年7月2日(日)よりオープン!開館を記念し、今日の公共建築の意義を考察する「公共建築はみんなの家である」展と講演会を開催。
せんだいメディアテークなど、数々の公共建築の設計を手がけてきた建築家・伊東豊雄氏が設計。
■『公共建築はみんなの家である』展 住民たちがみた公共建築」について
設計者である伊東豊雄はこれまでにも「せんだいメディアテーク」をはじめ、数々の公共建築の設計を手がけてきました。 本展は、水戸市民会館の開館を記念し、伊東がこれまでに設計を手掛けた代表的な公共建築から「せんだいメディアテーク」(2001年開館)、「まつもと市民芸術館」(2004年開館)、「座・高円寺」 (2009年開館)、「みんなの森ぎふメディアコスモス」(2015年開館)に「水戸市民会館」を加えた5施設を紹介します。各施設の模型、写真、映像などの資料や、そこに賑わいをつくり出してきた人々へのインタビュー、そこで働く人々や利用者の声を紹介するとともに、「水戸市民会館」の 設計に伊東が込めた想いを伝え、今日の公共建築の意義とこれからのあるべき姿を考察します。
■企画展 開催概要
水戸市民会館開館記念事業「公共建築はみんなの家である」 住民たちがみた公共建築
● 日時:2023年7月2日(日)~ 10月9日(月・祝)
● 時間:8:30~22:00 ※7月2日(日)のみ9:00開場
● 会場:水戸市民会館1階やぐら広場(茨城県水戸市泉町1-7-1)
● 入場料:無料
建築家・伊東豊雄が、水戸市民会館の設計に込めた想いを伝え、今日の公共建築の意義とこれからのあるべき姿を考察します。 詳細は以下、水戸芸術館HPにてご覧ください。
HP:https://www.arttowermito.or.jp/gallery/lineup/article_5261.html
■伊東豊雄講演会「公共建築はみんなの家である」について
2023年7月2日に開館を迎える水戸市民会館。設計者である伊東豊雄氏は、旧水戸藩の藩校であった弘道館など、水戸の歴史的建築とのつながりを持つような木造の力強い建築をつくり、水戸市民にとって「文化的なコミュニケーションが生まれる場」になってほしいと語っています。90年代から数多くの公共建築を手がけてきた伊東氏ですが、東日本大震災や熊本地震などの被災地においては、住人とともに話し合い、彼らの憩いの場となる集会所「みんなの家」を実現するなど、つねに公共建築のあるべき姿を考え実践してきました。伊東氏は、これからの公共建築は、機能で分割された空間によって人の活動が制約されるのではなく、「みんなの家」のように利用者主体で考えられ、あらゆる人が、まるで自然の中で過ごすように自由に活動できるものでなくてはならないといいます。
本講演では、伊東氏が自身の最新作となる市民会館の設計に込めた想いとともに、これからの「公共建築」について語ります。
■ 伊東豊雄講演会 開催概要
水戸市民会館開館記念事業 伊東豊雄講演会「公共建築はみんなの家である」
● 日時: 2023年7月22日(土)
● 時間:14:00~16:00(開場13:30)
● 会場:水戸市民会館ユードムホール(中ホール)
● 入場料:無料(先着順・全席指定)
● 定員:400名(要事前申込)
● 申込方法:
*6月17日(土)受付開始
・窓口:水戸芸術館エントランスホール内チケットカウンター(営業時間 9:30〜18:00/月曜休館)
・電話:水戸芸術館チケット予約センター TEL: 029-225-3555 (営業時間 9:30〜18:00/月曜休館)
・申し込み用ページ:https://www.arttowermito.or.jp/ticket/
講演会ページ:
https://www.arttowermito.or.jp/gallery/lineup/article_5262.html
■水戸市民会館について
● 開館日:2023年7月2日(日)より開館
● 住所:茨城県水戸市泉町1-7-1
● 開館時間:8:30 ~ 22:00
● 入館料:無料
■ 伊東豊雄からのメッセージ
私達は30年に亘って国内外の公共建築の設計に携わってきました。当初、「西欧では公共建築に関わらない建築家は建築家として認められない」といった言葉を信じ、公共建築の設計に関わることに固執していました。
しかしいざ参加してみると、次第に日本の公共建築の問題が明確に浮かび上がってきました。管理意識が強く、利用者にとっては必ずしも望ましい建築がつくられていないと気付いたのです。では利用者にとって望ましい建築とはどのような建築でしょうか。
利用者にとって望ましい建築とは、毎日でも行きたくなる建築です。毎日でも行きたくなるのは、行くのが楽しい建築、居心地の良い建築だからです。
しかし我が国の公共建築は、利用者にとって楽しい建築、居心地の良い建築をつくろうとするよりも機能的な建築、管理しやすい建築をつくろうとする傾向が強いように感じられます。「機能」という概念は20世紀以来の近代主義建築にとってきわめて重要な言葉です。「機能」は機械を構成する部品の性能とか効率のようなもののはたらき を指す概念です。
建築における機能概念は、機械部品のように人々の活動を分割して、それぞれに特化した空間に振り分け、活動別に人々をその空間に入れ込もうとしてしまうのです。
しかし人々の多様な活動を機械部品のように要素に分割し、その組み合わせと考えるのは科学技術に頼る西欧近代主義的思想に他なりません。そうした方法から楽しい空間や居心地の良い空間が生まれるとは思われません。 楽しさや心地良さは人間の身体感覚に基づく性質であり、決して機能毎に分割された空間(部屋)から得られるのではありません。
人は屋外、即ち自然の中では機能によって自らの活動を制限されることはありません。自然の中にはさまざまな変化に富んだ場所があります。明るい場所、暗い場所、乾いた場所、じめじめした場所、広い場所、狭い場所等々…。 自然の中で人々は、自分の活動の場所を自由に選ぶことが出来ます。例えば読書をしたい時、人は木陰のベンチで読書することも出来れば、芝生に寝転がって読書することも出来ます。我々は自然の中で読書するような図書館をつくりたいと考えてきました。即ち、建築の内にいても特定の部屋に居ることを強要されるのではなく、自然の中にいるようにさまざまな場所を自由に選ぶことが出来る建築、母子も高齢者も一緒にいることが出来る、 子供も好き勝手に走り回ることが出来る、そんな公共建築をつくりたいと考えてきました。 私達がこれまで携わってきた公共建築の多くは日々沢山の人々で賑わっています。その賑いは自由に振る舞える場所をつくろうとしてきたからだと信じています。機能にとらわれた部屋に分けてしまうことを極力避けようとしてきたからだと思います。
私達のつくってきた公共建築の多くで壁が少ないのは、部屋に分節されない流動的な空間の中に、変化に富んだ場所をつくろうと考えたからです。 その結果そのような賑わいの空間では、幼児、主婦、ビジネスマン、学生、高齢者など多くの人々が自由にそれぞれの居場所を定めることが容易になりました。混在している様子は、ゆるやかで、大きな家族の姿を想わせます。 私達が東日本大震災や熊本地震後の被災地でつくった「みんなの家」は、仮設住宅団地を中心に近隣の人々が集まっ て話し合いや食事をしたり、各種イベントなどの場として活用されています。「みんなの家」は、従来の公共施設のように自治体が内容を予め設定するのではなく、利用者と話し合い、利用者の要望をベースにつくられてきました。これからの公共建築は「みんなの家」のように利用者主体に考えられなくてはならないと思います。
今回の展覧会では、私達がこれまでに設計した4つの公共建築を取り上げ、それらがいかに利用されているかを追求してみました。
とりわけ館長や芸術監督にインタビューを試み、どのような施設を意図しようとしているかを語ってもらいました。また利用者やスタッフの人達にもインタビューやアンケートを通じて、実態に迫ろうとしました。新しい水戸市民会館は7月2日にオープンしますが、あらゆる年齢の市民の方々が毎日でも集まって利用してくださるような施設になることを心から願っています。
伊東豊雄