タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルムにて、松岡一哲の個展「やさしいだけ」を開催。
会期: 2020年10月3日(土)- 31日(土)
会場: タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルム
安心して作品をご覧いただけるよう様々な感染症対策を徹底しております。
タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルムは、10月3日(土)から10月31日(土)まで、松岡一哲の個展「やさしいだけ」を開催いたします。タカ・イシイギャラリーで初めての個展となる本展では2018年に上梓し大きな注目を浴びた初の写真集『マリイ』掲載作品と最新作から、約17点を展示いたします。
松岡は、妻・マリイを被写体とした、あるいは彼女の存在が感じられる景色、部屋や街といった日常的な風景を収めた私写真の系図に属する写真作品を発表してきました。我々自身のうちに蔓延る包括的な概念や言葉に依る解釈は、人間が作り出した所与の定義の上に成るものに過ぎないとし、写真という非言語メディアを介して世界の再解釈をするような試みを続けています。
”世界は、言葉にした途端、こぼれ落ちるものがあり、意味で捉えた途端に抜け落ちるものがある。私たちは普段、意味や概念、善悪、美醜、優劣など、誰かに作られた言葉のものさしで世界を見るようになっており、無意識のうちに価値観の枠組みだらけの世界に閉じ込められてしまっているとも言える。”
松岡一哲×宇田川弓(写真集『マリイ』対談コメントより)
本展では、企画構想から5年以上の歳月をかけ、松岡が妻との日常を継続的に撮り続けた数万枚という膨大なネガの中から、504点のイメージによって編まれた写真集『マリイ』に掲載されている作品を中心とし、本展のタイトルである「やさしいだけ」というテーマの元に纏められた作品を展示いたします。
パーソナルな日常シーンを均質に写し取る作家の等価な眼差しにより得られたイメージは、その被写体や街中の様相から、見る者に身近な感情を想起させると同時に、そこにたち現れるものの存在全てを肯定するかのような不思議な感覚をももたらし、静かにも強い作品世界へと誘います。松岡は、色彩によるイメージの平面化に関心を向けており、長年愛用しているオリンパス μ(ミュー)で撮影した作品群は、統一された淡い色のトーンを纏い、アナログならではのブレ・ボケや、特有の柔らかさなどを取り入れることで独特の浮遊感を生み出しています。「希望というものを、そのまま写真に写す」という作家の言葉通り、松岡は、強固に形成された世界をほぐすように揺らぎ続ける風景を丁寧に写真に収めています。この機会に写真家・松岡一哲の作品を是非ご高覧ください。
松岡一哲は1978年生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、スタジオフォボスに勤務し、独立。フリーランスの写真家として活動するかたわら、2008年6月よりテルメギャラリーを立ち上げ、運営。主にファッション、広告などコマーシャルフィルムを中心に活躍する一方、日常の身辺を写真に収めながらも、等価な眼差しで世界を捉え撮影を続ける。主な個展に「マリイ」Bookmarc(東京、2018年)、「マリイ」森岡書店(東京、2018年)、「Purple Matter」ダイトカイ(東京、2014年)、「やさしいだけ」流浪堂(東京、2014年)「東京 μ粒子」テルメギャラリー(東京、2011年)など。現在は東京を拠点に活動。