【ブランドインタビュー】flower and people / 望月萌々子 ー自然と人が共存する未来を目指して旅をするー
【ブランドインタビュー】flower and people / 望月萌々子 ー自然と人が共存する未来を目指して旅をするー
flower and peopleの閉幕、そしてこれからの旅、今感じている想いとは
対話を通して、感情・記憶・人柄・エピソードから発想したお花をオーダーメイドで制作する『flower and people』の望月萌々子さん。
『flower and people』としての活動は今年の6月で閉幕するとのこと。これまでの活動を振り返りながら、大切にしている信念や今後のテーマなど様々な想いを伺いました。
人と自然の境界のない未来をつくる
ー『flower and people』の活動について教えてください
「人と自然の境界をなくしたい」というコンセプトのもと、オンラインでオーダーメイドのお花屋さんをやっています。これまでには空間づくりやワークショップ、インスタレーションなどの活動も行ってきました。お花屋さんという形はあくまでも想いをアウトプットするための1つの手段です。
今の社会では、人と自然を別々に考えたときに「人が自然に対して何かしてあげよう」というような、生物界のヒエラルキーにおいて人が一番上にいるという意識があり、そんな意識が人と自然を分断してしまっているように思います。
みんなが「人と自然は別物だけれど、人は自然の仕組みを担う一部なんだ」という感覚を思い出せたらいいなという想いが根本にあり、そんな気持ちをシェアすることが当たり前になる世の中を目指して活動しています。
ー「人と自然の境界をなくしたい」というテーマにおいて、なぜ「お花」というアウトプット方法に至ったのですか
私自身がその想いを大切にしたいと思ったきっかけが「お花」だったからです。
私の祖母が華道の先生をやっていて、幼い頃からお花に触れる機会が多くありました。華道は日本のアニミズムとか自然崇拝と深くつながっているもので、自然の全てのものに魂が宿っているという考え方です。元々は神様の依り代(よりしろ)としてお花を立てたことが華道も始まりとも言われています。
幼い頃からそのような文化に触れてきたので、自分の中では自然と人間は対等であるという関係性が当たり前でした。しかし、自分の人生を生きていく中でそうではない場面に出会うことの方が多く、自分自身が傷ついたり違和感を持ったりしたところから始まった活動でした。そこで自分がその想いを伝えていく手段として何がいいのかなと考えた時に、その根本を教えてもらったお花で表現しようと決めました。
ーひとりひとりとの対話を通じてお花を贈る人への思いを膨らませながら制作するそうですが、どのようにストーリーからイメージを思い浮かべ形にしているのでしょうか
正直、答えるのが難しいです。人によって多く話せる人と話せない人がいるので、やはり解釈の度合いや解像度の違いはあります。私にお任せしますという方もいますし、自分の中のイメージを具体的に共有してくれる方もいます。そのため、どこまで自分の発想を介入させるかというところは今まで制作を重ねながら掴んできたように思います。
「お花を贈ること」それは人が人を想う気持ち
ーこれまで様々なエピソードから作品を制作してきたと思いますが、すべての作品において世界観がブレることなく表現できるのはなぜでしょう
私の作品を通して心から気持ちを贈りたいと思う人だけがオーダーしてくれるという想定で制作しているということもあります。
『flower and people』への間口はあえて狭くしているんです。オーダーメイドという形をとっており、LINEの登録、自分自身のこと・贈りたい相手との関係・エピソードなどのカルテの記入、それから私と30分〜1時間ほど電話で話したりと、届けるまでに多くの過程を設けているため、本当に心から頼みたいと思う人だけがオーダーしてくれているのではないかなと思っています。宣伝のような活動もInstagramに作品の写真やコンセプトなどを載せているくらいなので、私が作っている作品の雰囲気を見て共感したらオーダーしたいなと思ってもらえたら嬉しいです。
お花を贈ることって、本当にその人が大切だと感じるからやることだと思うので、とことん気持ちを大切にしたオーダーにしています。
ー「お花を贈る」というのは誕生日や記念日などのお祝いのタイミングに多いイメージがありますが、これまでどのようなエピソードのオーダーがありましたか
お誕生日や記念日のプレゼント、結婚式や出産のお祝い、母の日の贈りものなどのオーダーが多いと思います。他には、別れるパートナーへのはなむけにお花を贈りたいとか、留学を決断した自分の気持ちをお花に残して、初心にかえれる・頑張れるといった原点に立ち返るためのお花を作ってほしいとか、余命宣告を受けたおばあちゃんに贈りたいといったオーダーもありました。
印象的なエピソードもたくさんありますが、一番はどんなに近しい関係でもどんなに些細なことでも、何よりも本気で人が人を想う気持ちほど美しいものはないなと感じます。いつも私自身パワーをもらいながらお花を生けています。
ーお花を贈るきっかけが、必ずしもポジティブなエピソードである必要はないのでしょうか
はい。例えば母の日は、どうしても「お母さんありがとう」や「大好き」などポジティブな気持ちに焦点を当てようとする行事になっていますが、お母さんを亡くしている人やお母さんに対してポジティブな気持ちになれない人って絶対にいると思います。しかし、そういう人達の持っている感情が排除されてしまうような行事になってしまっているのが嫌だなと感じてます。
「それが自然なんだからあるべくしてあればいい」というように、人間が持っている感情をすべて肯定できるような、どんな感情も許容するための場所が『flower and people』だと思って活動してきました。ただ人の気持ちに寄り添うために活動しているわけではありませんが、人が自然に回帰する場所はその人の在り方や感情が自然であるべきだと考えているので、どんな気持ちも共有できる窓口であれたらいいなと思います。
ーこれまで『flower and people』の活動の他に、お花に関する仕事を経験されてきたのでしょうか
大学卒業後、お花屋さんに就職し知識や技術などはそこで鍛えられました。しかし、自分の中で大切にしていることと社会の縮図との違いを感じてしまい、心と体を病んでしまったんです。
例えば、母の日はお花が商業化されたイベントでありお花屋さんにとって1年に1回の書き入れ時なので、目まぐるしいスピードでロボットのようにお花が出ていきます。どんどん消費することがお花にとっても人にとっても無理があり、お花を贈りたいという人の根本的な気持ちに対して失礼なのではないかなと思ったりしました。自分が嫌だなと思う違和感を全部感じさせてもらったその時の経験は、反面教師として自分に生かしています。
それから、切り花を扱うお花屋さん、鉢植えやポットを扱う園芸屋さん、農家さんで生産のお仕事を経験したり、社会で植物を取り扱う仕事は一通りやってきました。今までの経験すべてが今の自分に繋がってるからこそ『flower and people』の活動に区切りをつけようと決めました。
『flower and people』の閉幕。そしてさらなる探求の旅へ
ー『flower and people』閉幕の決断に至ったのはなぜでしょうか
『flower and people』という自分のお花屋さんを作り、植物に関わる仕事を一通り経験したうえで、自然の仕組みの根本は土作りや環境作りからだと思いました。そこで山梨にある、森を再生させてオーガニックの庭を作っているという場所で、1年間庭仕事を経験し、宇宙のリズムに沿った農法や自然農法、有機農法など様々な農法などについて学びました。
一通り見た後に、結局はやはり自分のスピリットだなと感じ、人の人間性が豊かであれば自然と一緒にいることや自分が自然でいるということができるのではないかと思いました。これからは人の内面的な自然の部分に焦点を当てていきたいと考え、アウトプットや人との接点として「お花屋さん」という形で窓口を持つことに区切りをつけようと決めました。
ーお花ではなく、自分の内側にあるもの・人の内面という部分に表現方法が移ったということでしょうか
そうですね。もともと「内面が豊かであれば自然な状態でいられる」という筋は自分の中で通っていたのですが、人に分かりやすく伝えるためにお花屋さんという形を取っていたところがあります。しかし、お花屋さんをしていると、ただ可愛いとか綺麗で終わってしまうことも多くて。「感情や思考、直感のような人間の内側に宿っている自然を大切にしようよ」ということを伝えたくてお花屋さんをやっていたので、人が何を大切にしていて誰をどんな風に想っているのかといった内面の交換がしたかったんです。だけどやはり部分的に伝わってしまうことが多いなと実感しました。自分の伝えたい筋がどんどんずれていってしまうことにストレスを感じたこともありますが、今は分かりやすさよりも自分の探求を楽しみたいという思いが強いです。
ー望月さんにとって人が自然である状態というのはどういう状態だと考えますか
私自身にも「こういう状態です」という答えはなくて。もちろん私にとっての答えもきっとあると思うのですが、みんなにとってそれぞれ答えがあるのかなと思っていて、私もその答えを知りたいから活動を続けているのだと思います。
もともと「自分が一番美しいと思う景色を見たい」という感覚で活動を始めているんです。その美しいと思う景色というのが「人と自然が共にある状態、人が一番自然な状態で自然も一番自然な状態」だと考えていて、『flower and people』の活動はもちろん、日常生活や自分自身の夢なども全部そこに向かっています。だから自分の在り方とか生活の仕方とかも全部ひっくるめてその美しい景色を見るために学びとしてやっている感覚です。
ー「こういう状態」だと定義しないことも自然である感じがしますね
そうですね。生きている中で、違和感や不自然なことって割と分かると思うんです。時間通りに動くことが嫌いとか。それを単純に排除して嫌なことはすぐ手放すといったことをずっとやっています。
ー最後に、今後の望月さんの活動や夢について教えていただけますか
『flower and people』としての活動は6月で閉幕しますが、「自然と人との在り方」という自分の中でのテーマは変わらず探求の旅はずっと続きます。
今後の活動としては、「旅をしながらその土地土地での人と自然の在り方を体感する」ことをやっていきたいと思っています。
その土地土地で人と自然との関わり方には特色があって、それを自分が実際に現地へ行って体と感覚で感じるということを現在も行っています。今後は海外に行く予定で、そこでも植物と人とがどうあるのかといったところがライフテーマです。
人と自然とが対等にあるための根本にはコミュニケーションがあると思っていて、いつかは自分なりに植物と会話できる言語を体得したいです。そんな世界を見るために旅をしていきたいと思っています。今後は個人のInstagramアカウントでも旅の様子を発信していくので、ぜひ今後とも応援していただけたら嬉しいです。
アーティストプロフィール
■望月萌々子
Instagram:@flowering.days
1995年 山梨県生まれ、自然に囲まれた田舎で育つ。祖母が華道教室を営んでいたことから幼い頃から植物に魅せられるようになる。花卉の生産地や市場、花屋を訪ねて周り、生産と消費のあり方について巡る旅をしたり、花屋で働いたり。その中で感じた命としての生のサイクルと、相対するようなそれを経済価値として社会に流通させるサイクル。植物を巡る事象から捉える地球や人の在り方についてとても興味があり、その中で自分が信じていたいあり方を表現していきたいです。現在は旅をしながら人の中の自然性を探求してます。
ブランドプロフィール
■flower and people
Instagram:@flower_and_people
HP:https://flowerandpeople.studio.site/
感情、記憶、人柄、エピソードから発想したお花をオーダーメイドで作っています。
草花に力を借りてお花を贈るひとりひとりと届けたいその人への思いを膨らませながらお花のイメージを作り、それから制作に入る流れをとっています。
ここで混じり合うすべての人が消費者ではなく表現者としてまだ見ぬあり方を一緒に作っていけるように。
そして受け取ったあなたに、いっぱいのあたたかい思いが届くように。