【POPAP MAGAZINE】サステナビリティの視点から見るポップアップ
サステナビリティの視点から見るポップアップ〜一時的な空間から始まる持続可能な未来〜
様々なクリエイターが集い、それぞれのアイデアやコンセプトを発信するポップアップ。これまで主に消費者の好奇心や新しさを引き出す手段として展開されてきましたが、近年、サステナビリティに関するポップアップも増えてきています。
ポップアップは期間限定のイベントでありながらも、持続可能な社会に貢献する取り組みを行うクリエイターにとって、消費者とサステナビリティを結びつける効果的な場となっています。
本記事では、サステナブルな取り組みを行うクリエイターが参加するポップアップの意義と、ポップアップ空間に取り入れられた工夫についてご紹介します。
サステナブルな取り組みを行うクリエイターやポップアップ
サステナブルなポップアップの特徴は、環境や経済、社会に対して持続可能な活動を通じて、消費者がサステナビリティを直接体感できる点にあります。ここでは、ポップアップに参加するクリエイターとその活動の一部をご紹介します。
一人目は、海洋プラスチックを素材として作品を作り出すアーティスト宮崎栞奈さん。
環境問題に焦点を当てた作品を制作し、海岸に流れ着いたマイクロプラスチックと不要になったモノをリユースしたアップサイクルアートも発信し、アートを通じて社会問題に向き合う活動に取り組んでいます。展示の他にもワークショップやライブペイントなどのイベントを開催され、イベントでは、来場者もマイクロプラスチックなどを使って世界に1つの花瓶を製作することができるなど、普段はゴミとして捨てられてしまうものをアートへと変身させるワークショップが行われています。
宮崎栞奈
絵描き/アートパフォーマー
専門学校を卒業後、フリーランスで絵の活動を開始。自然や空想、命あるもの、その時の空気の色や感覚を絵で表現。また、環境問題、社会問題について考えるきっかけを作るようなアート活動をしています。個展やグループ展示、ライブペイント活動の他、CDジャケット、ロゴデザイン、グッズデザインなども行っています。絵は心の声、言葉のもっと奥深いところ絵具はおしゃべりツール。自然や空想の中に迷い込み、命あるものを探して描いています。
instagram:https://www.instagram.com/kannnna25/
過去開催されたワークショップ:【横浜ベイクォーターまちの学校|第10弾】野菜の絵の具と自然素材を使って、親子でしおりづくり!10/20(日)開催
POPAPブランドインタビュー:【ブランドインタビュー】 環境に向き合うアーティスト宮崎栞奈の想いとは
このようにアーティストが海洋プラスチックごみを回収し、アート作品として新たに生まれ変わらせることで、来場者は作品に触れると同時に、海洋環境問題の深刻さや解決への糸口を知ることができます。また、作品の展示や販売を通じて、訪問者が問題意識を持ち、自らの行動変容を促されるきっかけとなる場としても機能しています。
次に、端材や廃材を利用して新たなプロダクトを生み出すブランドのポップアップをご紹介します。
フルーツや野菜をアップサイクルしたアイテムを展開するライフスタイルブランド「LOVST TOKYO(ラヴィストトーキョー)」。
池袋駅地下で行われた「SDGsライフスタイル展」では、廃棄りんごから生まれた植物由来のアップルレザーを用いた名刺入れが販売されました。
“一見するとシンプルなデザインながら、内側にはアクセントとなるステッチがふんだんにあしらわれています。浅いポケットにも収まりが良い、機能性とデザイン性を兼ね備えたスリムなデザインが魅力のアイテムです。
廃棄りんご由来のアップルレザーは、動物性レザーや従来の合成皮革と比較すると、生産時に必要な水や排出するCO2の量を抑えることができます。”
このように、普段捨てられてしまう自然素材や製品の制作過程で出る端材を利用し、魅力的な製品へと再生させているブランドは、無駄を省き、素材の新たな可能性を示しています。このような再利用の取り組みは、訪問者に資源を大切に使う意識を自然に伝え、エシカルな選択の大切さを理解させる機会を提供しています。
過去に開催されたポップアップより引用:野菜由来のアップサイクル商品を展開するライフスタイルブランド『LOVST TOKYO』が池袋駅地下にてポップアップを実施!
最後に、地方自治体が主催となり、市民とともに地球環境の未来を考えるポップアップをご紹介します。若者が”園芸の未来”を想像し、プロトタイピング。「横浜フラワー&ガーデンフェスティバル2024」
“GREEN×EXPO 2027(2027年国際園芸博覧会)の開催を控える横浜市にて、日本最大級の新しい園芸イベント「横浜フラワー&ガーデンフェスティバル2024」が2024年5月3日(金)〜5月6日(月)に開催されました。特設ブースでは、ヨコハマ未来創造会議の出展が行われ、メインステージでは、ヨコハマ未来創造会議のメンバーによるトークセッションや園芸の未来を変える4つのグリーンプロジェクトによるピッチが行われました。”
過去に開催されたポップアップより引用:若者が”園芸の未来”を想像し、プロトタイピング。ヨコハマ未来創造会議も出演「横浜フラワー&ガーデンフェスティバル2024」イベントレポート
ポップアップ自体のサステナブルな取り組み
サステナブルをテーマにしたポップアップでは、イベント空間そのものにも環境への配慮が取り入れられています。これは、訪問者がポップアップの設営からサステナブルな姿勢を実感することで、「体験するサステナビリティ」としての価値を高める重要な要素です。
例えば、サステナブル素材で作られたディスプレイやブースなどが挙げられます。ポップアップの設営にあたり、古材やリサイクル素材、エコフレンドリーな紙製品を使用することで、資源の浪費を防ぎ、環境に配慮した空間づくりを実現しています。特に短期イベントであるポップアップでこのような取り組みが行われることは、持続可能なデザインの新たな可能性を示しています。
さらに、再生可能エネルギーの活用も取り入れられている場合があります。たとえば、屋外でのポップアップイベントではソーラーパネルを使用して電力を賄ったり、環境にやさしいLED照明を活用することで、エネルギー消費を抑えています。再生可能エネルギーの導入は、イベントの環境負荷軽減にとどまらず、来場者が「サステナブルな空間」に身を置くことで、エシカルな意識を高める効果が期待できます。
さらに、廃棄物を削減するために、再利用可能な什器の導入や徹底したゴミの分別が行われているケースもあります。ディスポーザブルなアイテムを極力排除し、使い捨てを減らすことで、ポップアップ終了後の廃棄物を抑制。資源を循環させるデザインの可能性を感じさせます。
実際に「横浜フラワー&ガーデンフェスティバル2024」ヨコハマ未来創造会議の特設ブースでは、展示什器がモクタンカンで作られていたり、展示物は再利用ができる布製素材が使用されていました。
消費者とサステナビリティの「共感の場」
サステナブルな取り組みを行うクリエイター、そしてサステナブルな空間そのものが提供されるポップアップは、消費者とサステナビリティの「共感の場」として機能しています。実際に製品や作品に触れられることで、消費者はブランドのメッセージを受け取り、自らの生活にもエシカルな選択肢を取り入れたいと感じるきっかけとなります。
例えば、マイクロプラスチックや端材を再利用して作られた製品に触れることで、「リサイクルが生み出す新しい価値」を実感したり、エシカル素材のファッションを手に取ることで、環境にやさしい消費が特別なものでなく、身近な選択肢であることを学ぶことができます。こうした共感体験は、ポップアップの短期間のイベントであっても、来場者の記憶に残り、長期的な消費行動に影響を与える可能性があります。
ポップアップを通じたサステナブルな消費行動の喚起
サステナブルなポップアップが消費者にとってどのようにサステナブルな消費行動を喚起するかも注目する点です。これらのポップアップでは、来場者が実際にエシカルな製品を購入したり、その場で環境への配慮について学ぶことで、サステナビリティへの関心が具体的な行動に結びつくきっかけが生まれます。
また、ポップアップという「ここでしか体験できない」「この期間だけ」という限定的な特別感も、消費者の購買意欲を刺激し、エシカルな選択を後押しする要因となっています。サステナブルなポップアップは、エシカル消費に関心がある層だけでなく、普段はあまり意識していなかった層に対しても新たな選択肢を提供する有効な手段だと言えます。
ポップアップが持つ社会的影響力と未来の可能性
サステナブルなポップアップは、消費者とサステナブルブランド、さらには地域社会をつなぐ新たなプラットフォームとして、今後も大きな可能性を持っています。イベントを通じてサステナビリティの意識を高め、消費者にエシカルな生活を提案する場として、重要な役割を果たすでしょう。
また、サステナブルなポップアップの成功事例は、企業やクリエイターにも新しい取り組みのインスピレーションを与え、サステナビリティに関する活動がさらに発展するきっかけになります。消費者のエシカル意識の高まりが、企業やブランドの活動に影響を及ぼし、持続可能な社会の構築に寄与することが期待されます。
まとめ
サステナブルな取り組みを行うブランドやアーティストが集まるポップアップ、そして空間全体に配慮が行き届いたポップアップは、消費者と持続可能な未来をつなぐ重要な場となります。来場者は実際に体感し、共感することで、エシカルな消費行動に繋がるきっかけを得ることができます。今後もこのようなポップアップが広まることで、消費者、ブランド、そして社会全体がともにサステナビリティを実現していく未来が期待できます。このような視点からポップアップに着目し、足を運んでみるのも興味深いかもしれません。