【ブランドインタビュー】atelier resfeber / aiさん「主体的に選び取ることの楽しさを、もう一度思い出してほしい。」
【ブランドインタビュー】atelier resfeber / aiさん「主体的に選び取ることの楽しさを、もう一度思い出してほしい」
【resfeber】:旅に出る直前、不安と期待が入り混じって、絶え間なく胸がドキドキすること
2024年11月、西荻窪に週一度だけ開く植物&古物店『atelier resfeber(アトリエ レースフェーベル)』がオープンした。
今回お話を伺ったのは、そのオーナーであるaiさん。
普段、彼女はwebマーケターとして勤めながら、通訳案内士、インテリアコーディネーター、グリーンアドバイザー、そしてZINEの作成と多才に幅広く活動されている。
彼女が今までどのような体験をして、どんなものを見てきたのか。
お話を聞きながら植物や古物への想い、彼女が大事にしている事を紐解いていき、
西荻窪という地で新たな物語を始めた『atelier resfeber』の魅力や可能性を引き出していく。
最初の構想はゲストハウス
—『atelier resfeber』を立ち上げた経緯について
もともとオンラインで植物の販売などはしていたんですけど、インテリアコーディネーターの資格を最近取ったので、今後空間デザインの方もやっていきたいなと考えてました。でも、自分のデザインを見てもらう場所を見つけるのが難しいのと、最初からインテリアコーディネーター一本でやるのは難しい。
なので、お店をやりながらデザインを見てもらって、知ってもらって、広げていけたらと。
最初は「旅×ライフスタイル×アート」みたいなゲストハウスやホステルをやろうと思っていたんですよね。
私がもともと旅行が好きなので老若男女、国籍問わず、いろんな人が集って刺激を受けて離散していくっていうカタチ。コロナの流行で旅行することが難しくなった時、いろいろ考えてゲストハウスじゃなくてもいいかなと思ったんです。
アンティークも好きですし、世界各国からのインスピレーションとかもありつつ植物を置いたり、地元アーティストさんやまだ光の当たってないデザイナーさんなどが自分のインスピレーションを発揮できるような空間があればいいなと。あと、私が仕事で大変だった時にアートや植物に救われることがあったので、ここに来ればこんな生き方もあるんだよ!とまた前を向くきっかけになれるような空間やインスピレーションに満ちた空間があったらいいなと思いました。
私自身、植物とインテリアのある暮らしなので、植物好きが暮らしやすい空間を広げていきたいという想いもあって最終的にこういうカタチになりましたね。
ー インテリアコーディネーターは最近取られたんですね
昔からインテリアとか空間デザインには興味があったんですよね。多分私は変わった子で、小学生の時の愛読書がインテリアの雑誌でした。(笑)
祖父母の家が近かったんですけど、リノベーションやリフォームで場所が変わったり、内部のデザインをどう変えるかとかよくしていたので、きっと暮らしに対する感染みたいな感じですね。
あとは親が旅行好きで、旅行を年に 3 回ぐらい行くような感じだったんですけど、各地の美術館に行くことも多くて、そこでアートやインテリアを見る機会が多かったですね。
植物に関しても、父親がバードウォッチングが趣味だったり、祖父が昆虫採取趣味だったり、自然に囲まれた環境で育ったので、自然や植物に対する想いは多分そこから来てるかと。多分小さい頃から色々インスピレーションを受けてきたんだと思います。
第三の選択肢を気付かせてくれたスウェーデン
— スウェーデンに長期滞在されていたり、ブランド名にスウェーデン語の”resfeber”が使われていますが、愛さんにとってスウェーデンとは?
いつもどこか息苦しさがあって、その時に色々な選択肢があるんだと「第三の選択肢」に気付かせてくれたのがスウェーデン。
スウェーデンでびっくりしたことが 2 つあって。
みんな自分の人生を主体的に選び取って生きてるということ。あとデザイン思考の浸透度。この 2 つにとても驚きました。
私がスウェーデンに行ったのが20歳の時でちょうど進路で悩んでいたんですけど、やりたい方向性が決まらず、とりあえず前から興味あったスウェーデンへ行ってみようと。スウェーデンでもどうしよう、決めなきゃと焦っていたんですけど、同い年の友人達は全然焦ってなくて、時間かけて決めればいいじゃん!みたいな感じ。消去法で選ぶんじゃなくて、自分は今これを選んでこうしてるんだと、ちゃんと自分の人生の選択肢を一つずつ選んでいくっていう考え方をしていて驚きましたね。
あと、デザインに対する考え方は凄く発展してるなと感じました。
ストックホルム駅全体がギャラリーになってたり、ただの通り抜けるだけの道じゃなくて、そこを通る人が楽しめる工夫がされていたり、町中が凝らされてましたね。
スウェーデンはヨーロッパの日本とも言われいて、国民性が近いみたいなんです。
基本人見知りで内気気味なんですけど、仲良くなるとめっちゃ喋るところとか。家の中では靴を脱ぐ習慣とか。(笑)
森や湖がすごく多いので、自然を大切にする文化っていうのが、国土半分以上山がある日本と共通する考え方がありますよね。
“resfeber”は私が好きなスウェーデン語の一つです。
最初からブランド名はスウェーデン語にしようと決めてました。
好きなスウェーデン語が 2 つあるのですが、2つとも私が将来の構想を考えていた時に出会った『翻訳できない世界のことば』という本に書いてあった言葉です。1 つが”resfeber”。旅に出る直前、不安と期待が入り混じって、絶え間なく胸がドキドキするという意味で。もう一つが”mangata(モンガータ)”。水面に映った道のように見える月の光っていう意味です。もしこの事業がうまくいって2号店が出来たら”mangata”にしようと思ってます。(笑)
“resfeber”は本当に私がやりたいことをそのまま表現してくれている言葉ですね。
— スウェーデンに興味を持ったきっかけは何だったんですか?
スウェーデン興味を持ったのは、自分と同い年のシンガーソングライター、ウルリック・マンターがきっかけでした。私と同い年なのに、「人生広いんだからそんな焦らず何でも好きなことやればいいじゃん」という歌詞を書いていて。同い年で人生に対して俯瞰をしてる感じがすごいなと。その人を生み出したスウェーデンという国がどういう国なのかという考えに行き着きましたね。
植物も生きている。日常的に生まれている植物のロスについて考える
—「LOSS GREEN MARKET」について教えてください
植物は生命力が結構強いんです。
私は住宅街の中で育ったんですけど、再開発で古いものが壊されて、それと一緒に植えられてた植物も全部枯らされて切り刻まれて、また新しいのを植えられるっていうのを日頃から目にしてきて、すごく人間都合で搾取されてるなと感じてました。なので、少しでもロスになる植物を減らしたいなと。
最近、ロスフラワーの取り組みは広がりつつありますけど、ロスグリーンの活動はまだあまり表に出てきていないなと感じますね。
母の日とか大量生産するんですけど、売れないと本当にロスになってしまう。大量廃棄になってしまう。
そんな話を聞いたりして、そのロスが日常的に生まれてしまってる状況をなんとか解決出来ないかなとか思ってました。
でも、ロスの植物を売ってしまうと逆に生産者さん側が売れなくなる問題もあったりするので、この活動はお金を得るとかではなく、譲り合いの場所みたいな感じです。
ちょっと譲り合いコーナーを設けてみた。という感じですね。まだ種類は少ないですけど、最終的に地域の人が持ってきたり、またここから持ってってもらえるような場にしていきたいなと思ってます。
モノも人も可能性が広がる場所に
—「Upcycle Lab」についても教えてください
物を捨てることに対して、価値を再定義するみたいな感じです。私が古いものが好きだったりするんですけど。
まだ使えるものやガラクタの中に、まだ新しいアイデアが眠ってると思ってて。リサイクルじゃないんですけど、その物の価値に気付ける空間があってもいいのかなと。
フレームだけになっちゃったものとか、布をレザーで張り替えれば私的に機能しそうなベンチとか、それを使って誰もがアーティストになれるし、誰もがデザイナーとしてインスピレーション発揮できたり、自分のクリエイティビティに気づけるところがあってもいいのかなと思いました。
そのツールの一つとして、こういう身近にあるインテリアに光を当てて、また蘇らせられるという。
—「Upcycle Lab」は誰でも参加可能ですか?
はい、誰でも参加できます。
やっぱり私だけじゃなく、双方向型で参加できるようにしたいです。
今はまだ私 1人のアトリエみたいな感じで単純なプロダクトアウトになっちゃってるんですけど、みんなが参加できるようなものにしたい。みんなのアイディアをギャラリーとして飾っても面白いなと思います。
結構日本ってすぐに物を壊して、新しいのがいいみたいな考え方が多いじゃないですか。ヨーロッパだと古いものに手入れして、また付加価値を与えるみたいな。
家もそうですし、暮らし方とか一つのものとってもそうだったんで、そういう考え方はもっと広げていきたいなと。そういう考え方もあるんだと知ってもらえたら嬉しいですね。
いろんな考え方があっていい、自分らしく生きる楽しさを
— 今後やりたいことや発展させていきたいビジョンなどはありますか?
まだ明確なビジョンみたいのはないんですけど、個人的にはスウェーデンにもアトリエみたいな感じで作りたい。サテライトみたいな。
もともと二拠点生活したいなと思ってて。
主人はアイルランドにルーツがある人なので、サマーハウスはアイルランドに作りたいと言ってるんですけど、スウェーデンもやっぱり譲れなくて。(笑)
両方にサマーハウスを作るかみたいな、勝手に夢だけ膨らんでますね。
例えば、暑い時はアイルランドに 2 ヶ月、スウェーデン2 ヶ月っていう感じで、脱出計画をしてみたり…場所に囚われず!
人生の中で「やりたいことがない」とか「やりたいことあるけど諦めてる」とか、結構色々考えることがあると思うんですけど私がスウェーデンで体験したように、こういう考え方もしていいんだと、前を向くきっかけになる場所になれたらと思います。
Owner’s Profile
インテリアコーディネーター|グリーンアドバイザー
青山学院大学卒業後、オックスフォード大学短期留学。旅行好きの両親の影響で幼少期から各地を旅し、郷土が育む文化や自然の美しさに触れて育つ。
特に長期滞在したスウェーデンに深い思い入れがあり、個々人の人生に対する主体性やデザイン思考、それらを支えていた社会構造に感銘を受ける。
現在はWebマーケティングを生業(rice work)としつつ、アトリエ・セレクトショップ運営(life work)、通訳案内士(like work)としてパラレルに活動中。
趣味はガーデニング、料理、登山、美術鑑賞。
website:https://atelierresfeber.com/
Instagram:atelier_resfeber
owner Instagram:plants_mag
Writer:AI ARIMITSU
POPAPMEMBER/ DANCER/ CREATOR/ CHOREOGRAPHER
website: https://rimmyquietto.my.canva.site/
Instagram:rimmyquietto